
前回のカニコロに続き、当店の大人気メニューの中からたこの石焼をご紹介致します。
使用する蛸は北海道産の水たこです。これは新鮮で手で触るとキュッと筋肉が縮む様な物なら刺身にしても相当に美味しいものですが、焼くと又香ばしい香りがたまらない御馳走となります。
塩焼きや醤油焼きなどのシンプルなやり方もいいのですが、私共では少しイタリア風に味付けを致します。
まず下ごしらえにぶよぶよした皮を包丁で取り除いて下さい。皮を左手の親指と人差し指、中指でつまんで引張り、吸盤との境目に包丁を縦にあてて少しづつ切る様にしたら皮を引っ張る様にして皮を剥きます。包丁を少しづつ動かしたら皮を切ってしまわない様に切り進み、皮をうまく剥ぎ取る様にして下さい。
皮が全て剥き取れたら、吸盤の中の汚れを歯ブラシか亀の子タワシの綺麗なので流水で洗い流して下さい。
そしてよく乾いた綺麗なフキンで水分を拭き取って下さい。
皮がぶよぶよして扱いにくいと思い、皮を剥くのを先にしましたが、ぬめりの多いタコの様な物を扱い慣れた人なら先に洗ってから水分を拭いてそれから皮を剥く方が水に旨味が逃げなくて良い様に思います。
そうしたら身と吸盤を太く大きいところは外して中位以下のところはそのまま、一口大に切って下さい。細いところは少し切り込みを入れて口当たりを柔らかくしてからカットして下さい(タコは細い先のほうのが堅くなります)。それを平らに並べて味をつけます。
まず塩は薄塩です。タコにある程度の塩分もあるのと香り付け程度ですが、醤油を少々かけますので塩は軽めです。そしてコショー。これは出来ればミルでボールのブラックペッパーを挽きたてで使いたいのです。今は香辛料の品揃えの良いところなら大抵ミル付きのホールコショーを売ってくれますので是非お持ちでない方はお求めになられる事をお奨めします。
これは非常に便利でステーキを焼くにしてもドレッシングを作るにしても何にしましても香りの高い一段上の料理になる事請け合いです。

話を戻して塩コショーをしたらガーリックパウダーをほんの少々、酒をひと振り、オリーブのエキストラバージョンオイルを少し回し掛け、香り付けの醤油を少々、それとあればパプリカパウダー少々に小口に切った浅つきを少し。これで準備は整った訳です。あとは焼くのですが、私の店では石焼料理がひとつの名物になっておりまして、このタコの他、げそ、京あげ、トリ貝や青柳、そして季節には松茸やふぐ等も石焼として提供しておりますが、この石を入手するのは一般には困難で、もし入手できましてもなかなかと利用される方は少ない様で・・・。と申しますのも、私共も開業から数えて約23年商売しておりまして、その間に少なからぬ何度かお客様からのご要望で石と耐熱皿と敷き板をセットにしてお分けして差し上げたのですが(勿論食器商に支払う分の代金は頂いておりますが)、その手に取られた時は皆様喜々と喜ばれ、早速御家庭で試されるのですが、家族の方々の食事のタイミングであるとか、焼く時の煙の事であるとか使用後の洗浄の難であるとか様々な煩わしさで億劫になり、いづれ棚の奥深く、ひっそりと仕舞い込まれてしまう様です。その方々には私の店で使用するのでそのままの値で買い取りますと申し出るのですが、何か気が引けるのかいやいやまた何かの時に使うからいいよと仰います。しかし私の場合を想像しますと、一旦面倒を感じてしまった物は二度と使用する事はありません。
そんな訳で近頃はどなたに欲しいとお申し出頂いてもこれまでの経緯をお話ししてお断りする様にしております。
しかしながら3年程前に最後にお渡しした方からはその後の話を伺っておりませんのでひょっとすると続けて楽しんでおられるかもしれません。そうである事を願います。
そんな訳でフライパンで焼く方法で参りたいと思います。タコにオリーブオイルがかかっておりますので油は引きません。鉄のフライパンを使用の場合はよく使い慣れた油のこなれたフライパンならば油を引かずともよく洗って水分を拭き取り、火にかけて熱々に焼けば焦げ付いたりしないと思います。
万一フライパンが新しかったり、又焦げ付き癖がついていたり、又ちょっと不安な方は使ったオリーブオイルを少々引いても良いでしょう。
フッ素加工したフライパンならば油なしで全然問題ありません。
鉄のフライパンの場合は熱々に焼いてから火を中火に直し、材料を一度にパッと入れ、軽く振ったら焼きます。
火が通るとか通らないとかはそんなに気にしなくとも元々刺身用のものですし、大丈夫です。しかし、中が冷たくては旨くありません。大き目の物をひとつつまんで食べてみて、熱々でしたら結構です。
フッ素加工のフライパンでしたら中火にかけて、少しあったまったところで材料を入れ、やはり軽く振りながら火を通して下さい。
職業料理人の私がこう申してはなんですが、タコのこの料理に関しては焼き方で味の差が大きく開く事が少ないので勿論本来は石焼にするのが一番なのでそうしていますが、フライパンでそれもフッ素加工の物でも相当に美味しく食べられる事でしょう。注意すべきは味付けの塩を控え目にする事と後はいつまでも焼いて火を通し過ぎる事、この2点は要注意です。後は鼻歌でも歌いながら楽しく焼いて下さい。
この楽しんでやる事は意外と重要です・・・。
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